「ねぇレオン」
「なに?」
「私のこといつから好きだったの?どこを見て好きになったの?」
「はぁ!?」
本を読んでいた顔を上げたレオンはおもいきり眉を寄せてから、プリシスから視線をそらす。色白なせいで余計に目立つその頬は真っ赤だった。確実に照れているであろうレオンにプリシスは容赦なく尋ねた。
会話すらまともにしていないラクール王国での対面。プリシスから見ればレオンは生意気で嫌な奴という印象しかなかった。もちろんその後の旅で良いところも知ったが、欠点だってあった。がさつだとか、五月蠅いとか、もっと落ち着けとか、さんざん言われ、口喧嘩が絶えないことも。しかも大半はレオンに言いくるめられてしまって、プリシスは悔しい思いをしている。はたから見れば微笑ましい子供同士の喧嘩に見えていたのかもしれない。喧嘩友達というのが一番しっくりくるような関係の中で、突然好きだと言われても。
告白された時、まっさきに疑ってしまったのだが、あまりにもレオンが危機迫ったように言うので、曖昧に『あぁ、うん』などと返事してしまい、とりあえずお付き合いしているようになったのだ。なにせいまだに信じられないのである。あのレオンから好きだと言う言葉が出てくるとは……。
「別に、なんだっていいだろ」
「良くない。だっていつも馬鹿にされてたし」
「プリシスがくだらないことばっか言うから」
「生意気だし」
「僕は才能に見合った行動をとっているだけだけど?」
「……優しくなかったし」
「優しくしたところで、なんかあるわけ?」
それが好きな子に対して言う台詞か。くだらないと言うような顔で、レオンは視線を本に戻す。確かに博識なのは認める。天才と称号がつくのも分かる。だからと言っても、この生意気っぷりには腹が立つ。しかし、気付いてしまった。レオンの頬から熱が引いていないことに。そこでプリシスはあえて、思ってもいないことを言ってみる。
「やっぱり本当は遊び感覚でからかってるんじゃないの?」
「そ、そんなわけないだろ」
「だって、冷たいし、いつも拗ねてる」
「拗ねてたわけじゃなくて!ずっと、好きだったから……!」
はっとした表情に合わせて、ぴんと上がったレオンの耳。
何というか、あれだろうか。好きな人ほど意地悪したくなる心理なのだろうか。
誘導尋問に成功したプリシスは珍しく優位に立った状況に乗っかる。
「ふ〜ん。なるほどね〜。そんなに好きだったんだ?」
「……そういうわけじゃない」
「照れてるー!可愛いとこもあるねー」
「五月蠅い!や、やめろって!」
恋人同士というよりも姉弟感覚のプリシスは、レオンの頭をわしゃわしゃと撫でる。
申し訳ないが、もう少しだけこういう関係でいられると嬉しい。レオンのことは好きなのだが、『好き』の意味がまだはっきりとしない。クロードに対する憧れではなく、アシュトンに対する親しみではなく、もっと違う『好き』なのは分かっているのだが――しかし、これも時間の問題だったり。自覚したときには、すでに初々しさが消え去り鬱陶しいぐらいアレな性格になったレオンから、逃れられなくなっているのだった。
【リクエスト/馴れ初めな感じのレオプリ】
レオンは初めツンデレだったと予想。次第にウザイぐらいプリシスラブになる