調べ物があって死武専の図書室に行った帰り。ある人物の声が聞こえたせいで立ち止まってしまった。 他人の会話に興味など無いに等しいにも関わらずにだ。 隠れるつもりも、聞き耳をたてるつもりも無かったが――少年の声が大きいので、嫌でも耳に入ってくる――あえて話しかけることはせずに、シュタインは壁に寄りかかった。
曲がり角の向こうには、俺様最強を述べるブラック☆スターと、シュタインの同居人であるマリーがいる。 特別重要な話しをしているとはまったく思えない2人なので、他愛のない内容だと分かりきっているのに、 なぜこうやって立ち止まっているのか。己の行動を不思議に思いつつも、耳を傾けた。
「ごめんねー。怒られなかった?」
「別にー。廊下に立たされたけどな。でも俺様にすれば授業なんてどうでもいい!そもそも決闘で遅れたぐらい多めに見ろってんだ! あのツギハギ博士に何言われようが、まったく関係ねぇ!」
ブラック☆スターの意気揚々と話す内容から、授業に遅れてきた罰として廊下に立たせたのを思い出した。 チームでの共鳴練習のためにすぐ呼び戻したので数分のことだが。……そういえばマリーに決闘の立会いをしてもらったと言っていたような。 遅れないように時間調整して欲しいと思いつつ、マリーだから仕方がないかーとおかしな根拠で諦めていたが、 少なくともマリー本人は教師の立場として気にしていたようだ。
「ほんとごめん。次からは気をつけるように努力するよ」
「おう!まぁ、せいぜい頑張ってくれ」
しかし反省しているのはいいが、教師と生徒の立場が逆転している。 マリーもブラック☆スターも些細なことを根に持つタイプではないし、気にしていないのだろう。ある意味純な2人の会話は死武専で一番 裏表が無いものかもしれない。 特にマリーは良い意味でも悪い意味でも本当に素直だ。 側にいると安心するが、反面で危険だと感じることも多々あり……それが、こうやって2人の会話を聞いてしまう原因だ。

「まったく……あんまり俺に心配かけさせないで欲しいんだけどね」
思いつつも、狂気に触れいてる今の自分が一番彼女に心配をかけさせていることは分かっている。
【原作第29話妄想/シュタインとマリーとブラック☆スター】