※原作第61話ベースの話しです。

どうしてB・Jを殺したのか?魂感知能力が危険だから、鬼神様の安心の為に。
此処に戻ってきた理由は?次なる危険要素マカ=アルバーンの殺害。
事実だったが、嘘になった。ジャスティンは真面目に答えた自身に呆れ、そしてあまりにも思い通りに進む全てが笑えた。 場違いながらも笑い声を抑えることができない。声を出して笑うことが久しぶりすぎて喉が少し痛んだ。 アリバイがない時間。次第に目立つ不信な行動。疑われるように残した証拠。 調べればいずれ辿り着くであろう、犯人は自分だと教えたことには気づいてくれただろうか。……どうやら素直な彼女は全て信じてしまっているようで、この調子ではこちらの本当の目的も理解できないだろう。
B・Jを殺したのは確かに能力を恐れていたこともあるが、ただ単に邪魔だったのだ。 彼女に気を向けているのが見て分かるのが目障りだった。だから魂すら残さずに消した。他に理由などない。 そしてマカ=アルバーンの殺害もあるが、そんなことはどうでも良いことで、ほぼ私用で此処には戻ってきた。 彼女が気にかけている……あの狂気に犯されかけている彼も目障りなのだ。だから消しにきた。 二つに共通するジャスティンの目的は、実に明快。彼女の全てを奪うこと。
彼女が不用意にB・Jに接したりしなければ。能力さえ無力化できれば殺しはしなかった、かもしれない。 彼にB・J殺害の容疑がかけられたときに、彼女がパートナーを辞めていれば私欲など出てこなかったはず。
だが、彼女だからこそ彼を一人には出来なかったのだろう。 彼女の気持ちは彼に傾いており、どうやら彼も彼女のことをかなり大切にしているようなので、ならば無理にでも割り込むまでだ。 一番残酷な方法で、忘れられないよう記憶に深く刻み付ける。それが彼女を悲しませるようなことでも構わない。 彼女が泣いたところで痛む心も持ち合わせてはいないし、痛みはいつまでも心に残る。いつまでも彼女は憎しみをもって考え続ける。
だからジャスティンは彼女の攻撃を弾き返した。さすが同じデスサイズなだけありかなりの衝撃を受けたが、やはり彼女が小柄なせいで 威力はやや劣るようだ。反動で倒れそうになる彼女の腕を引き寄せて額が触れるほど顔を近づけた。

「私は貴女の全てを奪いに来たのです。分かりますよね、この意味。B・Jさんの次は、死武専生にデスサイズスに……そして最後は必ず……」

貴女の一番大切なパートナーを殺します。
彼女の瞳が大きく揺れた。想像したのだろう。死武専生や仲間が地面に蹲っているのを。 魂すら残さなかったB・Jの死を目のあたりにして、酷い未来を見たいに違いない。 だと言うのに彼女は唇を噛んで、精一杯に睨みつけてくるのだから――掴んでいる腕にはまるで力が入ってなく 震えているくせに――その姿は弱く小さく、だからこそ……こんな貴女だからこそ愛おしい。
大切にしているもの、守りたいもの、愛おしいもの、全て奪いたい。全てを下さい。 何もかもを奪って、何もない彼女を見て、そして満足する。何もない彼女を手に入れて、そして満たされる。 病んでいくなかで、それでも癒しの波長がまだ残っているというのなら、それで私を救ってくださいよ。

さぁ、どうやって受け止めてくれますか?どうやって拒絶してくれますか?
【境界のディスカバー/ジャスティンとマリー】




シュタインは奴が本当のことを言っているようには思えなかった。 鬼神の為というB・J殺害の理由も、リスクを背負って此処に戻ってきた目的も……元より不自然すぎる証拠や、調べればすぐに分かる事実。 意図的に仕組まれたかの如く、犯人は奴自身だと主張しているようで腑に落ちなかった。引っかかるものがある。 隣にいるパートナーへ視線を向けるが、彼女はただ前を見ているだけで……奴の言葉を鵜呑みにしてしまったのか、それとも聞いていないのか、反応がない。
誰よりも涙を流した彼女は、奴が犯人だと分かったとき顔色一つ変えなかった。 仲間だと思っていた奴が仲間を殺したのだから、神経が軽くおかしくなっている自身ならば冷静でいられることは納得できるが、彼女が無表情だったのが逆に不気味だった。 比較的に感情を素直に出してくれる普段からすれば様子がおかしいのは明らかで、だから独りで駆け出してしまった彼女を止めるべきだったのだ。 怒りや悲しみを無理に抑えつけたままの、力任せの攻撃では奴には勝てない。 最少年で職人も付けずにデスサイズになった実力は裏切り者だとしても、認めざるを得ないほどの才能なのだから、もっと警戒するべきだった。 彼女の攻撃を防ぎ……さすがに威力全てを受けることはできずに、体制を崩したが……反動で彼女を引き寄せたのを見たときに後悔しても遅かった。
シュタインが崖を蹴り、矢のように一直線で降下して狙うのは奴。腕に波長を込め頭上から叩きつけた。 物凄い衝撃音と砕け散る地面の感触からしても、避けられたことは確実であり予想していた。 ただ意識をこちらに逸らせ、避けることに集中した瞬間に生じる隙。 強引に奴の手を突き放し、彼女から引き剥がすことだけが目的だった。 砂煙の舞う中で奴と対峙しながらも、取り戻した彼女の肩を抱き寄せる。
「……シュタ、イン……ごめん」
彼女はまっすぐに奴を見据えているものの、小さく震える身体と消えてしまいそうな声は誤魔化せていなかった。 素直な彼女だからこそ傷つけることは容易で、優しい彼女だからこそ同情を引くのも容易いと奴は分かっている。 駆けつけるまでの数十秒の間に何を言われたのかも予想が出来るのは、きっと奴と自身の狂気に触れた共通部分があるせいだ。 奴の立場で効果的に彼女にダメージを与える言葉は……。だから彼女の肩を抱く腕に力を込めた。
「マリー……大丈夫だよ。誰も死なないし、死なせない。生徒も仲間も……もちろん俺も」
こんな慰めの言葉しか言えないが、彼女はしっかりと頷いてくれた。
犯人の容疑をかけられ狂気に埋もれていた自分について来てくれた彼女。 守ろうと決めていたというのに。側に居て欲しい、手放したくない存在だというのに。傷つけてしまった。 悔やんだところで得るものは何もない。奴が彼女を求めていることだけは分かった。ならばここで宣言しよう。 自分に対しても奴に対しても破ることは許されない決まりを。破られるのはどちらかが死んだ時。これは宣戦布告。 B・Jの仇を取るとか、自身の身の潔白とか、そんなことはもうどうでも良い。今芽生えている殺意は彼女を奪おうとする愚かな奴へ。

「この瞬間。君がマリーの手を離したこの瞬間から、君がマリーに触れることは今後一切ない。もう触れることは許さない」

何も背負うことはない。奴の手を払いのけて俺の手を掴んで。
【境界のディスカバー/シュタインとマリー】