また電気も付けないで。すでに慣れたマリーが、買い物袋を降ろし手探りで電気のスイッチを 押したところ……珍しい光景を目にした。 中央に置かれているソファーで眠っているシュタインの姿。眠っていること事態は珍しいことではないのだが、 こんなにも無防備な姿は珍しい。 仰向けのまま投げ出された足に、白衣の裾はだらしなく床についている。眼鏡もかけたままだ。 普段は、眠ったとしても浅く短いせいで心身ともに休まっているとは思えず、それ以前に睡眠時間を惜しむことがある シュタインなのだが……かなりの睡魔に襲われていたのだろうか。 マリーの帰宅に気付くことなく、静かな寝息を立てている。あのへらへら不気味に笑う表情も、なぜか幼く見えて。
マリーは小さく微笑むと、寝室からある物を持ってきた。このままでは風邪を引いてしまうかのしれないと思い、 手にしているのは毛布……ではなく、サインペン。

「ふふふっ……普段の行いを悔いる時が来たわよぉ、シュタイン。積年の恨み晴らさでおくべきか」

シュタインの上に跨ったマリーが、黒光りする油性ペンを掲げた。これで何をするのか。
さぁ、想像してみてください。

【プリーズイマジネーション/マリー視点】




寝苦しさから覚めた意識は、カスタード色の髪が目に入ってきたせいで、一気に覚醒……するわけでもなかった。 変わらずぼーっとしたまま、状況をぼんやりと確認する。 なぜか急にとてつもない睡魔に襲われて、仮眠を取ろうとソファーに横になったことは覚えている。 どうやらそのまま長時間寝入ってしまったようだが……なぜマリーが自分をベッド代わりにすやすやと寝ているのかは謎だ。 寝苦しさは確実にマリーの重みだろう。 少し思案。本来ならばもっと慌てふためき、マリーを起こすべき場面だろうが、 それらに関する感情は沸かない。さして重いわけでもない。寧ろ、やわらかい暖かさが伝わってくるので好都合かも。 もちろん変な意味ではなく。つまりは、二度寝しよう。という結論に至ったわけだ。
しかし、再び眠りにつこうとしたシュタインの目は大きく開かれる。 甘えるように白衣を握っている彼女の手に収められているもの……黒いペンが視界に入ってきたからだ。 寝ていた自分。ペンを持った彼女。

「え?……この子、何してくれちゃったの?」

シュタインの脳裏に浮かんだ嫌な予感は多分外れていないだろう。これで何をされたのか。
さぁ、想像してみたください。

【プリーズイマジネーション/シュタイン視点】