(いつかちゃんと書いてみたいネタ.便乗編02 シュタインとマリー)
食物などを挟むのに用いる2本で一対の細い棒――箸。
下側の1本は薬指の横にあて、親指と人差し指の股に挟み込み、上側の1本は下の箸の先にそろえ……あぁ!もう分かりにくい!
投げ出しそうな勢いをシュタインの手前、なんとか押しとどめた。
今までも和食や中華で箸を使った経験があり、差し障りない程度に使えていたと思ったのだが、
どうやらきちんと使いこなすのは、なかなかに難しいようだ。
皿に無造作に置いてある、小さな豆を箸で掴むのにここまで苦戦するとは。
きちんと箸は持てる。挟むことも出来る。しかしゆっくりと持ち上げようとすると、落としてしまうのだ。
そんなマリーの前で、ぱくぱくと豆を口に運ぶシュタインは、なんてわざとらしいのだろうか。
「無理しなくてもいいんじゃない?使えなくても支障が出るわけでもないし。もちろん使えるに越した
ことはないけど。使えたほうが便利だと思うけど」
「……嫌味にしか聞こえないわよ」
「うん。嫌味のつもりで言ったから」
「あぁ!そう!絶対にうまく掴んでみせるんだから!」
落ち着いて。冷静にならなくては出来ることも出来ない。
まずは深呼吸して、それから手にかいた汗を拭いて、再度持ち方を確認して……じっと豆を睨む。
ゆっくりと箸を近づけて、まずはターゲットを挟む。よし、ここまでは順調。あとは落とさないように持ち上げるだけ。
ゆっくりと、慎重に、指先の神経に集中して。
すでに指先は小刻みに震えているのだが、ここで力を抜いてしまうわけにはいかない。
徐々に豆が皿から遠ざかる。あとは、態勢を維持しながら、腕をあげるだけ!と思ったところで
――パキ!――箸が折れた。
「……」
妙な静けさが漂った。マリーは手から崩れ落ちる箸の残骸をただ見つめる。
「誰にでも失敗はつきものだよ。努力してもできないことだってある。ときには諦めも肝心。無理なものは無理なんだから」
「……馬鹿にしてるでしょ」
「うん。馬鹿にしてるから。だから、はい、マリー。あーーん」
「結構よ!自分でとるから!」
ご丁寧に食べさせてくれる為に伸ばしてきた腕をきっぱりと断って、フォークを手に取った。
しかし、苛々したまま振り下ろしたせいか、フォークの先端が狙いを外し、反動で豆は皿から転げ落ちるのだった。
あーんってしてもらえばいいじゃんかね?