(いつかちゃんと書いてみたいネタ.05 シュタインとマリー)
今までにない冷え込みは、コンクリートむき出しの床を一段と冷たくする。
否応なしに寝起きの脳も、はっきりと覚醒したシュタインは身震いした。
ここまで寒いと感じるのも久しぶりだ。
何か温かいものが飲みたい。マリーがいれば自分で淹れるよりも断然に美味しいコーヒーを用意してくれるのだが、
そんな理由で早朝から起こす気はまったくなかった。
しかし、背後に感じる気配と、この間。既に起きていたようだ。波長で読み取る必要すらない。流れが簡単に想像できる。
予想通りにしがみ付いてきた彼女に驚くことはなかったのだが、別の意味でシュタインは眉をひそめた。
「……マリー。冷たい」
「だって今まで外にいたから。雪が降ってるの」
研究所にはほとんど窓がないので、まったく気づかなかったが、この気温の低さは雪のせいか。
それには納得がいくものの、普段の温かさからは比べ物にならない、服越しでも感じるマリーの体温は冷たすぎる。
ぎゅうぎゅうしがみ付いてくるマリーは、やたらにハイテンションなのだが、雪が降り積もる朝方から外で何を
していたのだろうか。防寒機能が一切ない部屋着のまま、外に出るほどの急用なんてそうそうにあるわけもない。
散歩?買い物?寝ぼけていた……そこまで酷くはないだろう。まさか雪に浮かれて遊びに飛び出したなんて――
「ねぇねぇ!あれ、凄いでしょ!シュだるま」
「……なに?」
「だからあれ!シュタインの形した雪だるまなの。だからシュだるま」
――どうやら、そのまさか、らしい。
指差されたテーブルを見ると、頭部を真横から枝が貫通している雪だるま。
向かって右枝の先に葉が突き刺さっているのは、ネジのつもりなのだろう。顔にはご丁寧にツギハギまで彫られている。
自信作のようで、嬉々と紹介してくれるマリーは元気すぎる。子供ではないのだからそこまでエンジョイしなくとも
良いと思うのだが、この様子だと長時間、外ではしゃいでいたようだ。
「うわ!雪!勘弁してよ〜って思ったんだけど、出てみれば楽しかったわ。ストレス発散!30分は外に居たかな。
この身体の冷たさには後悔が残るけど、おかげでシュタインがすごく温かい。心の冷たい人は体温が高いとか言うやつ?」
「そらどうも。なんならもっと熱くなるようなこと……してあげるけど?」
「あはは。じゃあ、コーヒーでも淹れようか」
嫌味交じりに氷のように冷たい手を撫でると、マリーは笑いながら離れた。
冗談抜きで本当に寒いので、結構本気で言ったのだが……まぁ綺麗にスルーされて。
キッチンでお湯を沸かし始めたようなので、とりあえず美味しいコーヒーを頂いて、その後にマリーを頂けばいいか。
意識せずにさりげなく密着する二人が好き。