(いつかちゃんと書いてみたいネタ.08 シュタインとマリー)

「シュタイン。もうちょっと私生活を見直したほうがいいわよ」
コーヒーを淹れながらも、呆れたようにそれでいてどこか諦めている表情でマリーに言われた。
死神様に頼まれていた調べ物をしていたところ、朝から夜に、夜から朝に、そしてまた夜に……と数日過ぎていたらしい。徹夜しているつもりはなくとも、いつの間にか夜が明けているので、食事もろくにとらず部屋からもほぼ出ていない。だいぶ麻痺している時間感覚もさして気になることではないが、マリーからすれば、死神様からの依頼だとしても引き篭もり状態を見逃すことは出来ないようだ。
「でも、今更だと思わない?」
「それはそうだけど!ご飯はちゃんと食べるようにしなさいよ」
「マリーのダイエットに貢献中」
「それはどーも!余計なお世話よ!いい?まずは顔をちゃんと洗って、それからひげも剃って!」
「あーー。コーヒー美味しー……!」
「もう!話を逸らさな……い……ん?……あら……?」
話が長くなりそうだったので、適当に話題を変えようとしたが、やはりマリーは逃がしてくれなかった。
どころか、両手で頬を思い切り叩かれた。粉砕さん。結構痛いんですけど。
しかし、怒ったマリーの表情は一瞬驚きのものに変わり、次第に眉をひそめる。何か思案しているようだったが、一人頷き解決したようで、今度は目を輝かせる。そのころころと変わる表情を、シュタインはただ見つめることしかできなかった。叩かれたばかりの頬が痛いせいではなくて……顎にかけて、柔らかい掌が何度も往復して撫でるせいで、動けないのだ。
「うわーー!なにこれ、おもしろい。なんかじょりじょりする感じが!よくわかんないけど気持ちー」
鏡すら見ていないので分からなかったが、どうやら無精髭のことを言っているようだ。鼻歌交じりにじょりじょり言いながら、それは楽しそうに頬を撫でてくれているマリー。
まるで小さな子供と父親とのスキンシップのようなこの光景だが……もちろん二人は子供でも親子でもなくて。
なーんか、色々とモヤモヤとムラムラしてくるのは仕方がないのではないだろうか。
「マリー……あんまやると、アレだから、このへんで止めといて」

シュタインにヒゲがあったのを見て。こーいうスキンシップも好きさ。