「マリーちゃん、君にシュタイン君のニューパートナーになってもらいたい」
死神様に告げられた指示にマリーは己を指差し、そして、瞬時にさまざまな考えが頭をよぎった。
死武専に急な召集がかかったのは当たり前のことだと思う。なんせあの鬼神が復活してしまったのだ。
そのためにマリーは梓と共にやって来たわけだが……未来図とかけ離れている。
デスサイズになったら引退して、大好きな人と結婚して、幸せな生活を望んでいたのに。
「そんな……ちょっと待ってください……私……仕事やる気ないんです……オセアニア担当を選んだのも、平和で仕事が楽だから……」
男に尽くしても結局はそれだけで、なんの発展にもならない。
梓にはあまり尽くされるとプレッシャーを感じてうまくいかないと言われたが、愛の加減なんて本当に分からない。
そもそも自分で分かっていた。好きだと尽くしても……本気で相手のことを好きになれないのだ。原因は不明だが、浮気性でないことは
はっきりと言っておこう。惚れやすいのは否定できないが。
マリーとしては過去の話しだと片付けたつもりだったが、死武専に戻ってきて実際に本人に会って――まさか初恋が戻ってきてしまった――のだろうか。
いや、まさか。それはあり得ない。
マリーはきっぱり決め付け、さらっと終わってしまったシュタインとの再会。
「死武専勤務で忙しくなったらもっと結婚が遅れちゃいます……」
恋人もいない状況で、仕事に打ち込んでどうする。
パートナーを任命されたが、このままでは理想とした未来予想図から遠ざかるのは確実だ。
個人的なことで断ることは出来ないし、本心ではすでに承諾しているのだが抗議だけはしておきたかった。
マリーは半泣き状態で訴えたが……まさか、隣にいたシュタインの口からあんな意外すぎる言葉が出てくるとは。
「大丈夫……俺がもらってあげるから」
「言わな……え……あ、いま……なんて……?」
予想もしていなかった。一気に今までの考えが吹き飛んで、思考までも宇宙に飛ばされた気分だった。
その場にいた死神様を含め全員が呆気に取られたことは言うまでもない。
こんな展開だったらマジで嬉しいのですよ。
【15Title力と感覚より01無重力/シュタインとマリー】